2012-04-08

市之倉で窯元めぐりを楽しむ。


6年連続で訪ねることになった多治見・市之倉の陶器祭り。すっかり4月第2土・日の恒例となった。今年は、4月の「8日」と少し早いこともあるが、春の訪れがことのほか遅いので−例年咲き誇るヤマザクラやハナモモを楽しみながらのドライブを楽しむのだが−南に下っていく中央道から未だ花は見られない。
篠ノ井から3時間ほどで市之倉小学校跡の駐車場に到着。いつも満開で迎えてくれるソメイヨシノはようやく花が開き始めたところ。青空が広がり、長野からやってきた私たちにはずいぶんと暖かく感じられるが、こちらの人には風が冷たいのだろう、ダウンジャケット姿がずいぶんと目立つ。アンズやスイセンの花が満開といったところで、例年に比べ1週間以上も季節の進みが遅いように思う。
ここ2年ほどは車を停めたら直ぐに川沿いを下っていき玉山窯を目指した−数量限定の福袋を手に入れたいので−が、今年は玉山窯から送られてきた案内状に返事をして福袋を注文してあるので慌てて行く必要もなく、川の対岸を下りながら、これまで訪ねたことのない窯元を訪ねる。
 先ず訪れたのは「廣千窯」。住宅の並ぶ中に溶け込むようなこじんまりとした窯元で、庭先のテーブルの上に作品を並べた長閑な雰囲気。どんなものかなと、それほど期待もせずに小さなギャラリーも覗いてみる。すると、市之倉ではこれまで見なかった天目の茶碗や花器、それに織部や黄瀬戸もなかなか素晴らしい。妻と二人「なかなか良い品だねぇ」と眺めていると、頼みもしないのに人懐っこそうなおじさんがやってきてあれこれ説明してくれる。どうやら窯の作家高木廣司さんのようだ。大きな志野の花器があるので、「これは良いですねぇ」と話すと、次から次へと話が止まらない。妻は天目の器が気に入ったようだが、取り合えず、玉山窯の福袋の中身を見てから買い物をしようと、ここを離れる。
川沿いを少し下って対岸に渡り玉山窯へ。どっしりとした木造の建物に、上品な、これぞ美濃焼という器が山のように並べられていて、いつもながら目の保養になる。奥のギャラリーでは玉山窯の次代を担う玉置兼光さん作の茶碗の展示即売。黒織部の茶碗はとても良い。1万5千円という値付けは安すぎるのでは、と思ってよく見ると、ほとんどの値札に赤丸印がついていて、これは売却済みとのこと。「そうだよねぇ」、これは破格の値段だ。結局ここでは、妻が去年までの福袋に入っていたコーヒーカップに合わせたミルクサーバーを買い、そして注文しておいた福袋1万円を受け取り、さっき来た道を戻る。人気のないところで福袋の中身を確認。織部の中皿、鼠志野の深皿、フリーカップなどなど、市価で4−5万円の品良い器が沢山入っていて妻は大満足。
そして、件の廣千窯に戻る。妻は天目の一輪挿しを買い求めようと決めている様子。私も「何かいいものがあれば」、と花器を中心にギャラリーの品物を眺めていると、高木さんがやってきて、「これはいいですよ」と黄瀬戸の花器を薦めてくれる。迷いのない造りが見事と思うのだが、2万5千円という値段に迷っていると、「2万円でいいよ。で、奥さんが気に入っている天目の一輪挿しはオマケに持っていきな」という。金沢の近江町市場で買い物しているようなノリで、作品とのギャップに戸惑うが、勢いにも押されて購入。陶器に2万円払うのは始めてだが、作者の話をじっくり聞けたので満足した買い物。経歴を見ると既に70歳を超えている高木さん。受賞歴からすれば大先生然していても不思議はないのだが、とても器用な上に好奇心旺盛、あれこれ作ることが楽しくてしょうがない、という風で、お話好きな愛すべき人柄。と、私は思う・・・だが、妻は、自分が気に入った「天目の一輪挿し」をオマケ扱いされたことに憤慨している様子。「自分のつくったもの−しかも天目−をオマケなんて・・・もっと誇りを持ってほしい」と言う。
楽しかった廣千窯を出て車に戻り、いくつかギャラリーを覗く。人間国宝の作品もガラスケースに売られていて目の保養を楽しむ。そんな中に廣千窯の品物もあり、高木さんの言うとおり結構な値段がついていて、先ほどの会話を思い出しながら自然と笑みがこぼれる。
さかずき美術館に寄ってから幸兵衛窯。篠ノ井の妻の実家にあるのと同じ焼き魚皿が見つかり、義母へのお土産に購入。既に廃盤となっている商品だったのに、これで数を揃えることが出来、蔵出し市ならではの幸運。それと、幸兵衛窯では、去年成人式を迎えた長男にぐい呑みを買ってあげようと探すが、ピンとくる物がない。そこで、幸兵衛窯に登ってくる前に見つけたものにしようと、さかずき美術館に戻る。長男と同じ名前の作者の銘があるぐい呑み。志野の土に織部の薬を掛けたものでなかなか味わいがある。少しお値段高めだが、大事に使ってもらおうと買い求める。
最後に寄ったのは貞山陶房。霊仙寺の家で「マーボ豆腐」など盛り付ける器が欲しいなぁと探してみる。妻は高台のついた皿を勧めるが、焼締め風で油が染みたりしないか心配。「では確認してみよう」とレジに向かうと、この窯の作家加藤晃人さんがいて、作りの確かさを丁寧に説明してくれる。「マーボ豆腐」に4千円は少し奢り過ぎかなとも思うが、市価は倍以上で作りはしっかりしているし、昨年ここで買った小鉢とお揃いでもあるので、購入。この味わいは私のお気に入りなので、霊仙寺の家で使う食器は貞山陶房で揃えていきたいなぁと思う。
14時過ぎ、混雑を避けて市之倉を離れ、隣町「瀬戸品の道の駅」で軽食。帰路に着く前に、併設している陶器センターを訪ねてみる。ここの品物を眺めていると‐確かに良い器ではあるのだが−市之倉の窯元で見つける器の方が−見慣れたきたこともあるのだろう−いいなぁと思えるから不思議だ。茶道を嗜んでお気に入りの茶碗などを買い求めるのも良し、山の家の食器を揃えるのも良い。窯元を訪ねて、作者の顔が見える、少し大きめのものをこれから入手していきたいなぁと感じた今年の陶器市だった。

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